羅生門

Source text: 青空文庫 Pitch accent analysis: akusento parser
Legend
Atamadaka
Heiban
Nakadaka
Odaka
Kifuku
Accent drop
Devoiced
Rules applied
* Patterns are assigned based on the lexical pitch accent.
Rendered chapter

暮方くれがた一人下人げにん羅生しょもんあめやみ

このおとこほかだれない所々ところころ丹塗にぬりきな円柱まるしら蟋蟀きりりす一匹いっとまっいる羅生しょもん朱雀すざく大路おじ以上じょうこのおとこにもあめやみする市女笠いちめ揉烏帽子もみぼしじゅう3人さんありそれこのおとこほかだれない

何故このじゅう3年さんねん京都きょうと地震じしん辻風つじかぜ火事とか饑饉とかわざわいつづいそこ洛中ちゅうさびれ一通ととお旧記きゅうきよる仏像ぶつぞう仏具つぐ打砕そのたり金銀んぎんはくたりみちばたつみたきぎ洛中ちゅうその始末まつから羅生しょもん修理しゅうりよりだれかえりかっするその狐狸盗人ぬすびとうとうしまい引取死人しびとこの習慣しゅうかん出来そこなくなでも気味この近所んじょあしないしまっ

そのかわまたらすから昼間ひるそのらす何羽んわ鴟尾まわりがらびまいるうわ夕焼ゆうやあかくそれ胡麻ごまうにはっらす勿論ろん死人しびとつい。――もっ今日きょ刻限げんおそいちない所々ところころくずれかそうそのくず石段いしだんらす点々てんてんこびり下人げにんだん石段いしだん一番いちばんうえあらいざみぎ出来きな面皰きびがらぼん

作者しゃっき、「下人げにんあめやみ下人げにんやん格別かくべつうしようだんなら勿論ろん主人しゅじんはずとこその主人しゅじんから四五しごにちひまにもうに当時うじ京都きょうと一通ととお衰微いびこの下人げにん永年ながねん使つかわれ主人しゅじんからひまこの衰微いびさな余波ほかないから下人げにんあめやみりもふりこめ下人げにんどころ途方とほうくれ適当とうそのうえ今日きょそら模様ようくならずこの平安朝へいあんちょう下人げにんSentimentalisme影響えいきょうさがからふりいまだあがそこ下人さがても差当さしあた明日あすくら――どうにもないとりとめかんたどりがらから朱雀すざく大路おじふるもなく

羅生しょもんとおから夕闇ゆうやみ次第しだい見上みあ屋根しゃいらかさきおもたくうすぐらささいる

どうにもないする手段しゅだんいるいとま築土ついじみちばた饑死うえじにするかりそうこのいぬうにられしまうかりえらない――下人げにんかん何度んどおなみち低徊ていかい揚句あげくやっとこの局所きょしょ逢着ほうちゃこのつまでても結局けっきょく下人げにん手段しゅだんえらないいう肯定こうていがらこの当然とうぜんその盗人ぬすびとよりほか仕方かた積極せっきょてき肯定こうていする勇気うき

下人げにんきなそれから大儀たいぎうに立上たちのぼ夕冷ゆうびする京都きょうと火桶ひおほどかぜはしはしあいだ夕闇ゆうやみとも遠慮えんりょきぬ丹塗にぬりはしとまっ蟋蟀きりりすこかしまっ

下人げにんくびちぢめがら山吹ぶき汗袗あせかさまわりまわ雨風かぜうれえ人目とめおそれ一晩ばんられとこそこもかくもからするさいわうえあがはばこれ梯子はしごならどうせ死人しびとかり下人げにんそここし聖柄ひじづか太刀鞘走さやばしないようにがらわら草履うりはいその梯子はしご一番いちばんふみ

それから何分んぷん羅生しょもんはば梯子はしご中段ちゅうだん一人おとうにちぢめころがらうえ容子ようすうかがからそのおとこみぎぬらいるみじひげあか面皰きび下人げにんはじからこのいる死人しびとかりそれ梯子はしごじゅう3段んだんのぼそのここうごいるこれそのいろい隅々ずみ蜘蛛天井てんじょううらがらそれこのこの羅生しょもんからどうせ

下人げにん守宮もりうに足音あしやっときゅう梯子はしご一番いちばんうえまでようにのぼそうからだ出来できだけたいらがらくび出来できだけおそのぞ

うわさ死骸しがい造作うさかりおよ範囲んいよりともわかないおぼろげがらそのはだか死骸しがい着物きもの死骸しがいいう勿論ろんおんおといるそうその死骸しがいみなそれ人間にんげん事実さえうたがれるほど人形にんぎょううにたりろごろゆかころがっとかとかいる部分ぶんぼんいる部分ぶん一層いっそうくらがら永久えいきゅうおし

下人げにん死骸しがい腐爛ふらん臭気しゅうきわずはなおおその瞬間しゅんかんはなおおわす感情かんじょうんどことこのおとこ嗅覚きゅうかくしまっから

下人げにんそのめてその死骸しがいうずくいる人間にんげん檜皮色ひわだいろ着物きもの白髪頭しらがたまうな老婆うばその老婆うばみぎ木片きぎれその死骸しがいかおのぞようにかみとこ多分ぶんおんな死骸しがい

下人げにん六分恐怖きょ四分好奇心こうしんうご暫時んじ呼吸いきさえわす旧記きゅうき記者しゃ、「頭身とうしんようにかんする老婆うば木片きぎれ床板ゆかいたあいだそれからいま死骸しがいくび両手りょうて丁度ちょうどしらみようにそのかみ一本いっぽんたがける

そのかみ一本いっぽんたが下人げにんここから恐怖きょうふそうそれ同時どうじこの老婆うばたいはげ憎悪うお。――いやこの老婆うばたい語弊ごへいかもないしろあらたい反感はんかん一分いっぷんこのこの下人げにんっきこのおとかん饑死うえじに盗人ぬすびと問題もんだいあらめて持出もちたららく下人げにんなん未練れん饑死うえじにそれほどこのおとこここ老婆うばゆか木片きぎれうにいきあが

下人げにん勿論ろん何故老婆うば死人しびとかみわかなかったが合理ごうりてきそれ善悪んあくいずれかたかっ下人げにんてはこのこの羅生しょもん死人しびとかみそれべから勿論ろん下人げにんっきまで自分じぶん盗人ぬすびととうわす

そこ下人げにん両足りょうあしいきなり梯子はしごからそう聖柄ひじづか太刀かけがら大股おおまた老婆うばあゆ老婆うばおどまでも

老婆うば一目下人げにんまるでいしゆみはじかように

おのれ。」

下人げにん老婆うば死骸しがいつまずきがらあわする行手こうのの老婆うばそれ下人げにんする下人げにんまたそれかすしも二人死骸しがいらく無言むごんままかみ勝敗しょうはいはじめからいる下人げにんうとう老婆うば無理そこ丁度ちょうどにわとりあしうなかり

これ。」

下人げにん老婆うばいきなり太刀はがねそのれど老婆うばいる両手りょうてなわなふるわせがら眼球めだまぶたうになるほど見開みひおしうに執拗しゅういるこれ下人げにんはじ明白めいはくこの老婆うば生死いし全然ぜんぜん自分じぶん意志支配はいされ意識そうこの意識いま憎悪うおここいつのにかしまっった仕事しごとそれ円満えんまん成就じょうじゅらか得意満足んぞかりそこ下人げにん老婆うば見下みくだがらやわこう

おれ検非違使いしちょ役人やくにんいまがたこのとおりかたびからまえうしよううないま時分じぶんこのそれおれはなさえ。」

する老婆うば見開みひ一層いっそうじっとその下人げにんかお見守みまもぶたあか肉食しょちょううなするそれからしわんどはなちびるいるうにうご喉仏のどとけそのそのかららすうなあえ下人げにんわっ

このこのかずらじゃ。」

下人げにん老婆うば存外ぞんがい平凡へいぼん失望つぼうそう失望つぼう同時どうじまた憎悪うおやか侮蔑ぶべいっこころいっするその気色先方せんぽうつう老婆うば片手かたて死骸しがいあたからなりつぶようなごもりがらこんな

成程なるほど死人しびとかみぼうかもじゃここいる死人しびとどもみなそのらいされ人間にんげんかりだぞ現在んざいわしおん四寸すんかり干魚うお太刀帯わき疫病えやみんだらそれこのおんな干魚うおあじ太刀帯わきどもかさ菜料さいりよういたわしこのおんなねば饑死うえじにじゃ仕方かたればまたわしおもこれとてもねば饑死うえじにじゃ仕方かたするじゃわいじゃその仕方かたこのおん大方おおかたわしする大目おおめくれる。」

老婆うば大体だいたいこんな意味

下人げにん太刀その太刀ひだりおさえがら冷然れいぜんこのはな勿論ろんみぎあかきな面皰きびがらこれいる下人げにんここ勇気うきまれそれっきこのおと勇気うきそうまたこののぼこの老婆うば勇気全然ぜんぜん反対はんたい方向ほうこううごする勇気うき下人げにん饑死うえじに盗人ぬすびとまよなかっかりそのこのおとここころから饑死うえじにんどかんえるさえ出来ないほど意識

っと。」

老婆うばはなおわ下人げにんあざようなねんそう一足とあし不意ふいみぎ面皰きびから老婆うばえりがみじょうかみがらうにこう

おのれ引剥はぎうらおれそうけれ饑死うえじにするからだ。」

下人げにんすば老婆うば着物きものそれからしがみする老婆うば手荒てあら死骸しがい蹴倒けた梯子はしごずかかぞかり下人げにん檜皮色ひわだいろ着物きものかかえまたきゅう梯子はしごそこかけ

らくうに老婆うば死骸しがいからそのはだかからだそれからなく老婆うばつぶようなようながらいるより梯子はしごそうそこからみじ白髪しらさかさまのぞ洞々とうとうたるかり

下人げにん行方ゆくえだれない

大正たいしょう四年よねん九月がつ